最近のテレビやSNSでは、高齢者による自動車事故を大きく取り上げています。
そうなると、世間としては「高齢者は免許返納しろ!」という声が上がりやすくなるのもわかります。
高齢者からすると「車がないと生活できない!」となるのもわかります。
でも、高齢者の操作ミスによって起きる事故が多いように感じるのも事実です。
そこで、実際のデータを見て考察してみることにしました。
この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。
高齢者よりも10代・20代の事故率の方が高い説について
最近のテレビやSNSでのバッシングについて、武田邦彦氏がテレビで「老人イジメじゃないの?」と苦言を述べました。
その主張によると、10代・20代の方が80歳以上よりも事故が多いから、高齢を理由に免許返納はおかしいというものでした。
この主張を聞いて思ったのは、データがそうだったとしても、10代・20代はバイクも含まれるし、そもそも免許取り立てでこれから上達する余地がある若者と、衰えていく一方の高齢者を非比較すること自体がおかしいと思いました。
例えるなら、「高齢者が仕事できなくてリストラされるなら、新卒の新入社員はもっと仕事できないんだからクビにした方がいい」と言っているようなものです。
どれだけおかしなことを言っているかわかるでしょう。
まぁそれでもデータを分析しないことにはわかりません。
そこで実際に警察庁が公開しているデータを確認することにしました。
警察庁が公開している統計表
実は、事故について警察庁が統計表を公開しています。
まずは、データから見ていきましょう。
年齢層別の免許保有者10万人あたりの交通事故件数について
原付以上運転者の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移データをご覧ください。
これを見ると16~19歳が圧倒的に多いことがわかりますね。
まぁこれはわかりきったことですので問題ありません。運転に関して初心者のような年齢で事故が起きやすいのは仕方のないことですからね。
ちょっとビックリしたのは、20~29歳の方が80歳以上よりも事故率が高かったことです。
もちろん「原付やバイクが含まれている」「まだ免許取り立ても多い」という点があったとしても意外でした。
とはいえ、根本的な運転能力が低いことよりも、モラルの問題のような事故が多いのではないでしょうか。
もちろん、そんな人は運転する資格はありませんので免許停止で問題ないです。
そして、80歳を下回る年齢に関しては、その他の年齢層と大差ありませんでした。もし、免許返納が義務化されるとすれば、80歳以上が対象となる可能性が高いでしょう。
でも、テレビやSNSなどでは高齢者が引き起こす交通事故が多いように思えませんか?
これは何故でしょうか。その答えは高齢者の運転による交通死亡事故率の高さです。
年齢別人口10万人当たり死者数について
まずは、単純な年齢別人口10万人当たり死者数のデータをご覧ください。
70歳を超えると一気に増えることがわかりますね。
ただ、これは問題となっている運転車としての数ではありません。
高齢者が歩行者となった際に死亡するケースも数に含まれています。
年齢層別の状態別死者の状況について
先ほどのデータでは、歩行者としての死亡事故が多いだけに見えますが、このデータをご覧ください。
明らかに70歳を超えてから自動車乗車中に死亡事故を起こす数が増えています。15~19歳、20~24歳の比ではありません。
85歳以上からちょっと減っているのは、運転会回数の減少が要因となっているでしょう。
80歳以上でも運転回数は減っているでしょうが、それでも圧倒的な死亡率です。
とはいえ、このデータも運転者以外のケースも入っています。まだ分析するには早いですね。
年齢層別の免許保有者10万人あたりの死亡事故件数について
原付以上運転者の年齢層辺別免許保有者10万人当たり死亡事故件数の推移データをご覧ください。
16~19歳を除くと、80歳以上が断トツなことがわかりますね。その次に20~29歳と70~79歳が入ります。
確かにテレビやSNSでは死亡事故などの大きな事故しか騒がれません。
となると、若い世代の暴走運転や高齢者の運転能力低下による事故が多く目にするというわけです。
交通事故の原因
私が交通事故の件数よりも重要だと思っているのが、交通事故の原因です。
どうですか?私が推察した通りの結果となっています。
経験不足の16~19歳に運転操作不備があるのは仕方ありません。
しかし、高齢者にベテランなはずの高齢者で運転不備のポイントが高いというのは、紛れもない運転技術の衰えだと言えるでしょう。
それに漫然運転のポイントが高いのも問題ですね。
若者の漫然運転や脇見運転が多い理由は、おそらくスマホの使用でしょう。若者のモラルについては、もう少し対策が必要ですね。
高齢運転者による交通死亡事故に係る分析
実は、警察庁もデータから分析結果をまとめています。
・高齢者の人口10万人当たり死者数は全年齢層の約2倍
・全死者数の約半数が歩行中又は自転車乗用中の死者。
⇒うち約7割が高齢者。
⇒うち約3分の2に法令違反あり。
とあります。
平成30年の分析は、高齢者に関する記述が少なかったのですが、平成29年は、高齢者の交通事故についての分析が細かかったので、こちらの方が参考になるでしょう。
『免許人口当たりの死亡事故件数を見てみると、75歳以上の高齢運転者は、75歳未満の運転者と比較して死亡事故が多く発生している。』
『75歳以上、80歳以上の高齢運転者ともに、免許人口当たり死亡事故件数は減少傾向にある。一方、75歳以上、80歳以上の高齢運転者は、75歳未満の運転者と比べて約2.1倍、約2.9倍高い水準 にあり、高齢運転者ほど死亡事故を起こしやすい傾向が続いている』
『75歳以上の高齢運転者は、操作不適による事故が最も多い。そのうち、ブレーキとアクセルによる踏み間違い事故は、75歳未満が全体の0.8%に過ぎないのに 対し、75歳以上の高齢運転者は6.2%と高い水準にある。』
【高齢運転者による死亡事故に係る分析のまとめ】
・75歳以上高齢運転者は、免許人口当たりの死亡事故件数が多いことから死亡事故を起こしやすい傾向にあり、今後も運転免許保有者数が増加する中において、高齢運転者による事故防止対策は喫緊の課題。
・75歳以上高齢運転者による死亡事故は、75歳未満の運転者と比較して車両単独事故が多く、特に工作物 衝突や路外逸脱事故が多く発生している。
また、人的要因では操作不適が最も多く、特にブレーキとアクセルの踏み間違いによるものの割合が高い。
・死亡事故を起こした75歳以上高齢運転者は、全受検者と比較して、直近の認知機能の検査結果が第1分類(認知症のおそれ)、第2分類(認知機能低下のおそれ)であった者の割合が高いことから、認知機能の低下が死亡事故の発生に影響を及ぼしているものと推察される。
◆ 認知症対策の強化等を内容とする改正道路交通法を適切に運用するとともに、運転に不安を覚える者に対する専門的な助言・指導を行う運転適性相談の充実・強化を進め、高齢者の運転免許証の自主返納を促進する。
◆ 高齢者講習等において、加齢に応じた望ましい運転の在り方等に関し適切な理解を促すほか、高齢運転者特有の事故を防ぐため、「安全運転サポート車(セーフティ・サポートカーS)」(自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載した自動車)の普及に関する関係省庁の取組を支援する。
公式の分析としても、高齢者の運転が危険という見解になっていいますね。
高齢者の運転が危険というのは、イメージの話ではなくデータをソースにした事実であると言えるでしょう。
高齢者の免許更新を厳しく
いくら高齢者の運転技術が衰えているケースが多いとはいえ、そこまで衰えていないのに返納させるというのは可哀そうですよね。
であれば、免許更新の際に運転技術のテストをすることはできないのでしょうか?莫大な税金がかかるので現実的ではないのかもしれませんね。
一定の年齢で強制的に免許返納
では、もう強制的に返納というのはどうなのでしょうか。
たとえば、いくら運転技術が優れていようと、自動車免許は18歳以上でなければ取得できませんよね。
その間、不便な生活を強いられているわけです。しかし、法律で決まっている以上、それをわかった上で生活をしていきます。高齢者もそのようにすればいいのではないでしょうか。
ある一定の年齢で免許延納が義務化されれば、それをわかった上で生活していくでしょう。
免許返納義務化はインフラ整備が不可欠
現状で高齢者の場合、引っ越しも難しいですよね。
そんな方の移動手段である自動車を奪ってしまうのは、流石に酷いですよね。
免許返納を義務化するのであれば、車を運転できなくなった高齢者がまともに生活できるような支援が不可欠でしょう。
とはいえ、最近は田舎でもネットショッピングが利用できますが…。
高齢者も努力が必要でしょう。
限定免許という案もある
免許返納を義務付けるのではなく、ある一定の年齢の方は自動運転付きの車だけ運転可能な免許にするという案もあります。
これに関しては、割と実現可能性が高いと思っています。
数十年後には自動運転車の割合が増えるでしょうし、折衷案としては妥当な気がします。