有給の義務化で5日以上の消化が必須になる パートも対象?
2019年4月1日から有給休暇を5日以上消化させるのが義務化されました。
今回の法改正で何が変わったのか。企業や労働者は何をする必要があるのか。
なるべくかいつまんで簡単に説明します。
この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。
有給休暇の消化義務化対象は5日以上
今回の法改正の名前は「年次有給化の時季指定義務」です。
内容のポイントを簡単に説明すると、
企業は【10日以上の有給休暇の取得権利が与えられている労働者】を対象に、必ず5日以上の取得させることを義務付けさせるということです。
参考資料:厚生労働省 時季指定義務
そうなんです。実は、そもそも有給休暇の取得権利というのは、【法律で決められている日数】と【企業で決められている日数】があるんです。
その辺りのポイントも簡単に説明します。
労働基準法での有給休暇の定め
まず、有給休暇の付与日数を計算する際、一番重要で優先されるのは労働基準法の定めです。
注意点:企業の就業規則が優先されるわけではありません。
よく「うちの会社には有給休暇がない」と言っている人を見かけますが、そんなことはありえません。
労働基準法で定められていますので、企業は労働基準法で定められている日数を労働者から取得請求されると拒むことはできません。
詳しい日数を説明しましょう。
参考資料:厚生労働省 有給休暇
労働基準法での有給休暇の付与日数計算方法
では、実際に労働基準法での有給休暇の付与日数を計算してみましょう。
まず、有給休暇が与えられる対象の労働者は以下の通りです。
フルタイムの正社員の有給休暇付与日数
フルタイムで働いている正社員の有給休暇付与日数が一番多いです。
最初の有給休暇付与条件は、雇入れ(入社)の日から6か月が経過(全労働日の8割以上の出勤率)していることが条件です。
上記の条件をクリアすれば、10日が付与されます。
この時点で、今回の法改正の5日以上消化義務の対象に入ることになりますね。
その後の有給休暇付与日数は以下の通りです。
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
どうでしょう?意外と多いと感じる人もいるかもしれませんね。
日本人は有給休暇の取得率が低いのですが、実は法律ではこんなにも保護されているんですよ。
さて、正社員であればまともに有給休暇を取得している人もいますが、実は今回の法改正とは関係なく、パートやアルバイトにも有給休暇が付与されます。
計算方法は若干ややこしいです。1週間の所定労働日数と所定労働時間、1年間の所定労働日数で決まります。
週所定労働日数が4日または年間の所定労働日数が169日から216日の労働者の有給休暇付与日数
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
週所定労働日数が3日または年間の所定労働日数が121日から168日の労働者の有給休暇付与日数
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
週所定労働日数が2日または年間の所定労働日数が73日から120日の労働者の有給休暇付与日数
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
週所定労働日数が1日または年間の所定労働日数が48日から72日の労働者の有給休暇付与日数7
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5以上 |
付与日数 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 |
パート、アルバイトなら週3日以上が有給義務化の対象
上記の表を見ていただければわかると思いますが、パートやアルバイトで週3日程度の勤務を5.5年以上働けば、ようやく有給休暇が10日以上になります。
有給休暇の義務化対象は、【10日以上の有給休暇の取得権利が与えられれている労働者】ですので、週1,2日程度の勤務では何年働こうと対象にならないことがわかります。
職業訓練校に通う未成年者の有給休暇付与日数
ちなみに、正社員の中でも労働基準法第72条の特例の適用を受ける未成年者は、通常の正社員よりも有給休暇付与日数が多く設定されています。
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5以上 |
付与日数 | 12 | 13 | 14 | 16 | 18 | 20 |
年次有給休暇の繰り越しについて
年次有給休暇は、1年間で付与されますが、1年間で消化しきれない時は来年度に繰り越すことが認められています。
つまり、今までの労働基準法では、最大で40日の有給休暇を溜めることができました。
企業の就業規則での有給休暇の付与日数計算方法
とはいえ、企業の就業規則などで定めている有給休暇の付与日数もありますよね。
実は、「優先されるのは労働基準法」と前述しましたが、優先される基準があります。
それは、就業規則などに定められている有給休暇付与日数が労働者にとって不利な場合です。
たとえば、労働基準法では6か月で10日の有給休暇が付与されるところを、9日にしていたり、入社日から1年後としたり、などです。
ですが、いわゆるホワイト企業では労働基準法よりも労働者が得をするような有給休暇付与基準を定めていることもあります。
たとえば、6か月で10日の有給休暇が付与されるところを、入社日からいきなり12日が付与されたりします。
有給休暇の時季変更権
原則では、使用者(企業)は労働者から有給休暇の取得申請をされると断ることができません。
ただし、繁忙期に取られては困ることもありますよね。
そういった場合は、使用者から「この日は繁忙期なので、他の時季に変更できないか?」といった内容を、労働者に請求が可能です。
年次有給休暇の計画的付与制度について
今回の法改正よりも前に、年次有給休暇には「計画的付与制度」というものが存在しました。
労働者が自由に指定できる有給休暇を5日だけ残し、残りの有給休暇付与日数を使用者(企業)が指定できるというものです。
これは知らない人も多い制度ではないでしょうか。しかし、今回の法改正でも焦りがない企業は、元々この制度を利用しているケースがほとんどです。
すでに、5日以上の有給休暇を指定して消化させていますからね。
法改正後に焦っている企業も、対策としてこの制度を利用するケースが多いのではないでしょうか?
ただ、労働者が自ら5日以上消化しているのであれば、計画的付与も必要ありません。
有給休暇の義務化に違反した場合の罰則は?
使用者(企業)が気になるポイントとしては、今回の「年次有給休暇の時季指定義務」に違反すると罰則があるのかということです。
もちろんあります。
労働者一人につき罰金30万円です。
あいかわらず、労働基準法に違反した場合の罰則は軽いですね。
年次有給休暇の買取について
休みを取らせるのが難しいから有給休暇を買い取らせたいと思う使用者(企業)もいるでしょうし、労働者も休みよりもお金が欲しいという人もいるでしょう。
そんな時に、消化できなかった有給休暇を買取が可能だと便利だと思いませんか?
これは、原則認められていません。ただし例外があります。それは、退職時に消化できなかった場合です。
退職時に休暇日数がどうしても確保できなかった場合にのみ有給休暇の買取が可能です。
元々休日だった日を有給休暇に変更された場合
今回のような法改正で有給休暇の義務化がされると、必ず姑息な手を使ってくるブラック企業が出てくるでしょう。
その一例が、「元々休日だった日を有給休暇として指定する」というものです。
こんな企業は労働基準局に通報してください。明らかな労働者への不利益変更です。
使用者(企業)は、有給休暇の取得について労働者が不利になるような変更を加えてはいけないことになっています。
明らかに違法な行為と言えます。
有給休暇の半休は認められる
有給休暇を消化させるのにあたって、半休2回で1回扱いにできるのか気になりますよね。
答えは、可能です。ただし、時間単位での切り分けが不可です。
たとえば、2時間ごとの4回に分けるといったことは認められていませんので、気を付けてください。
世界と日本の有給休暇取得率の比較
いまや旅行を考える際に一度は見かけるであろうExpediaが世界19か国の有給休暇取得率を調査してくれています。
これによると、日本は3年連続で有給休暇取得率が最下位です。
この結果で面白いのが、フランスや香港、インドでは有給休暇の取得率や日数が多いにも関わらず、「休み不足」と感じている人の割合も高いんです。日本は、そこまで休み不足とも感じていないんですね。
そして、有給休暇の取得に罪悪感があると感じている人の割合も日本は1位です。
その他の結果でも、日本が有給休暇を消化するのが苦手だとうことがわかる結果になっています。
今回の法改正で、有給休暇の消化が義務化されますので、少しはそういった気持ちも軽減されるのではないでしょうか?
日本の平成30年の年次有給休暇取得率
現在の日本の年次有給休暇の取得率をご存知でしょうか?
厚生労働省が発表している年次有給休暇取得率は、意外と高いです。
なんと、男性47.5%、女性57.0%、全体では51.1%です。どうですか?私は意外に思えました。
有給休暇の義務化で、この数字がどれだけ変わるのか楽しみですね。
育児休暇復帰後の有給休暇付与日数について
出勤率によって有給休暇の付与日数が違うということは、育児休暇で休んでいる間は出勤率に含まれるのか気になりますよね。
結論としては、育児休暇中の休んでいる日は出勤しているとみなされるため、出勤率に含まれます。
とはいえ、育児休暇中に年次有給休暇の消化ができません。
復帰までの期間が長い方は、産休に入る前に残っている年次有給休暇を消化しておきましょう。
働き方改革の流れで、労働基準法が2019年4月に大幅改正されました。内容を見てみると時間外労働の上限規制や就業規則の見直しなどが含まれており、企業は労働環境を見直すことが必須になることでしょう。そこで、労働基準法改正の内容と[…]