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マズローの自己実現理論(欲求段階説)新解釈から考察する現代社会の生き方

経営学や心理学を学んでいると、必ず出てくるのがアブラハム・マズローが提唱した自己実現理論。

欲求段階説や欲求5段階説、欲求ピラミッドとも言われています。

基本的には、人間は低階層の欲求が先にきて、その欲求が満たされていると上の階層の欲求が出てくるといった考え方です。

しかし、新解釈として6段階説も出てきましたし、ヒルガードの心理学という本では7段階説も出てきました。

今回は、マズローの基本的欲求の階層図への原典からの新解釈の内容を簡単に解説しつつ、現代社会の生き方を考えていきましょう。

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

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アブラハム・マズロー

まずは、アブラハム・マズローがどんな人物なのかを紹介します。

名前アブラハム・ハロルド・マズロー(Abraham Harold Maslow)
生没1908年4月1日~1970年6月8日
職業心理学者
国籍アメリカ合衆国

元々、心理学というのは「行動主義心理学」というサルと人間を分けない、行動主義の学問として研究されていました。

マズローも、元々はそういった実験心理学を大学で学んでいたわけですが、行動主義者のような考え方ではなかったんですね。

以下のような発言から、それはわかります。

「一匹一匹のサルが好きになっていたがゆえに,そうでない場合よりずっと真に迫った正確な結論に到達できた」

「最初の赤ん坊が私を変えた」

「行動主義はもう耐えられないほど馬鹿げたものに思われた」

「この小さな神秘的な生物を見ていると,自分が馬鹿げているように思えた」

「その神秘とまさにコントロールとは無縁であるという感じに圧倒された」

そこでマズローは、人間特有の心理として「人間性心理学」というものを提唱することになったのです。

マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説と聞けば、よく出てくるのがピラミッド形の図ですね。

マズロー 欲求5段階説 ピラミッド

三角形のピラミッド形がよく見られますが、台形タイプもあるようですね。

マズロー 欲求5段階説 台形

上の階層(高次の欲求)から、

  • 自己実現の欲求 (Self-actualization)
  • 承認(尊重)の欲求 (Esteem)
  • 社会的欲求 / 所属と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)
  • 安全の欲求 (Safety needs)
  • 生理的欲求 (Physiological needs)

となります。

下の階層(低次の欲求)から解説します。

生理的欲求 (Physiological needs)

本能的な欲求のことです。食欲(排泄含む)、睡眠欲などの生命維持に必要なことが主になっています。

まずはここが満たされないと、更に上の階層(高次の欲求)が出てこないとされています。

ここが、動物との境目となっています。動物は基本的に、この段階の欲求しかありません。

ちなみに、性欲もここに含まれるのですが、「結婚や恋人を作りたい」「好かれたい」「愛されたい」という欲求は、上の階層(高次の階層)となります。

安全の欲求 (Safety needs)

安定とも言えるのですが、健康維持や事故防止などが含まれます。

日本だと生活保護などのセーフティ・ネットもここです。

社会的欲求 / 所属と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)

ここからがようやく、社会生活をおくる上での大人としての欲求と言えるでしょう。

日本の現代社会において、これより下の低次欲求がある程度満たされていない人は、ほぼいないです。

この欲求は、先ほどあげた「結婚や恋人を作りたい」「好かれたい」「愛されたい」というものが含まれます。

この段階の欲求は、ある程度満たされないと、孤独感などから鬱病などに陥りやすいです。

承認(尊重)の欲求 (Esteem)

この階層は、皆さんも良く目にすることが増えてきているのではないでしょうか。

そうです。FacebookやInstagram、twitterなどのSNSや、YoutubeやTiktokなどの動画投稿サイトを観ると、一般人の承認欲求で溢れていますね。

実は、この承認(尊重)の欲求 (Esteem)というのは2つに分かれているとされています。

  • 他者からの評価による承認欲求
  • 自分自身の評価による承認欲求

この二つです。他社からの評価による承認欲求の方が低次とされていて、この段階で留まるのは危険だとマズローも指摘しています。

いわゆる、例に出したSNSや動画投稿サイトでの承認欲求は、他社からの評価による承認欲求となります。

この承認(尊重)の欲求 (Esteem)がある程度満たされていないと、劣等感などが出やすくなってしまいます。

自己実現の欲求 (Self-actualization)

今までの段階は、ある程度満たされないとマイナスの感情を抱きやすくなるような欲求で、欠乏欲求と言われています。

ですが、この自己実現の欲求 (Self-actualization)だけは成長欲求と言われており、満たされなくても問題はありません。

たまに、普通の生活を犠牲にしてでも「なりたい自分」を目指して努力する人がいますが、稀なケースです。

ほとんどの場合は、低次の欲求がある程度満たされるとようやく自己実現の欲求 (Self-actualization)が出てきます。

欠乏欲求成長欲求も高次欲求論という、元々は自己実現論とは別の理論です。フランク・ゴーブルという人がマズローの自己実現論を図で説明した時に追加しました。

そして、この自己実現の欲求の中身ですが、以下のようなものがあります。

『真』『善』『美』『躍動』『個性』『完全』『必然』『完成』『正義』『秩序』『単純』『豊富』『楽しみ』『無疑』『自己充実』『意味』

これらは、どれが上位という風には分類されていません。

マズローの欲求6段階説

と、ここまでは有名な話です。

経営学や看護学、心理学を勉強していない人でも聞いたことはありそうな話ではないでしょうか。

ここからが、新たな解釈です。

実は、自己実現の欲求 (Self-actualization)の上があるという説です。マズローが晩年に出しました。

まずは、図をご覧ください。

マズロー 欲求6段階説

自己実現の上に超越がありますね。
これは、あくまで一個人の「なりたい自分」であるのに対し、もっと広い視野での欲求となります。
定義上は以下の通りです。
  • 「在ること」 (Being) の世界について、よく知っている
  • 「在ること」 (Being) のレベルにおいて生きている
  • 統合された意識を持つ
  • 落ち着いていて、瞑想的な認知をする
  • 深い洞察を得た経験が、今までにある
  • 他者の不幸に罪悪感を抱く
  • 創造的である
  • 謙虚である
  • 聡明である
  • 多視点的な思考ができる
  • 外見は普通である (Very normal on the outside)
引用:wikipredia
そして、この超越欲求が満たされている人は至高体験があると言われています。

マズローの欲求7段階説

『ヒルガードの心理学』という本の中では、マズローの欲求について7段階説を唱えています。

図をご覧ください。

マズロー 欲求7段階説

ここでは、「審美的欲求」と「認知の欲求」がピックアップされていますね。

認知の欲求

「認知の欲求」なんかは、昔に流行ったトリビアの泉を観ていた人であれば意味がわかるのではないでしょうか。
人間のみが「知る」という行為そのものを欲するという話です。
知らない方のために説明すると、生きていく上では何の役にも立たない知識でさえ、人間は知りたいと思うということです。

審美的欲求

少しわかりにくいかもしれませんので、具体的に説明します。

財布にお札を入れる際に、向きを揃えたいと思ったことはありませんか?

下手な絵、字、歌で不快な気持ちになることはありませんか?

こういうことです。これも、人間にしかない欲求というわけです。

マズローの自己実現論の充足度

マズローの説では、普通の人間の充足度としては、以下のように主張していました。

「生理的欲求は 85%,安全の欲求は 70%,愛の欲求は 50%,自尊心の欲求は 40%,自己実現の欲求は 10%が充足されているのが普通の人間ではないか」

つまり、下の段階(低次)の欲求が完全に満たされる必要はないわけです。

自己実現論に科学的根拠はない

マズローの自己実現論(欲求段階説)には、何ら科学的根拠はありません。

それに時代背景も、現代社会には合っていないことも多いです。

たとえば、先ほども例に出したSNSで説明します。

ここ数年では、「他者から承認されること」そのものが自己実現欲求となっている人が多いのでは?という疑問も出てきます。

ただこれは、本来であれば承認欲求という自己実現欲求よりも低次の欲求なんです。

しかし、SNSやYoutube、Tiktokなどで有名になり、「インフルエンサーになること」自体が自己実現欲求だと思ってしまうんですね。

実際は、有名になればなるほど「インフルエンサーになること」「有名になること」よりも、「視聴者を楽しませたい」などの自己実現欲求が強い人が多いのが証拠です。

とはいえ、段階の境目が曖昧になっているのは間違いないでしょう。

マズローの時代には、SNSなんてありませんしたからね。

学問はツールでしかない

心理学でも哲学でも経営学でもそうですが、あくまで学問はツールでしかありません。

マズローの実現論(欲求段階説)を妄信していると社会生活は何も改善されません。

しかし、人をコントロールする上でのちょっとしたテクニックとしては使えます。

食欲(生理的欲求)が満たされている人に美味しい食べ物をオススメしても効果は少ないですよね。

老後2000万円問題が話題になりましたが、あれは金融庁が将来の生活への不安をあおり、貯金から投資へと資金を移動させようとしたものです。

つまり、安全の欲求に対して働きかけているわけです。実際に、今回の件で投資の相談というのが増大したそうです。

このように、学問をツールとして利用すると効果が得られることも少なくありません。

妄信してはいけませんが、一種の考え方として利用するのも面白いでしょう。

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マズローの欲求5段階
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